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クリスマスのこと。

by 優恵

 11月の終わりのことだった。ベビーカーを押して、片手に何やら長くて大きなものを持った若いお父さんと信号待ちで並んだ。わたしは、ちょっと大変そうだな、と思いながらちらちらと気になっていた。新聞紙にぐるぐると包まれた円錐型の大荷物。新聞紙の隙間から見えた緑色の木。あぁ、クリスマスツリーか。早いなぁ。まだベビーカーに乗る小さな人の為にこんなに大きなツリーを家に入れるのか。そして、お父さんは嬉しそうなのだ。お母さんに頼まれて仕方なく買って来たようにはどうしたって見えないほどにこにこしている。

 しかも生の木ではないか。プラスチックだとかビニールだとかの「また来年出そうね」のツリーではない。新聞紙を開いたらば〜んと両手を広げるように現れる本物の木だ。

 バスに乗り込んだわたしの数人後ろから若いお父さんとツリーの新聞包とベビーカーは乗って来た。良い席に落ち着こうとしていたわたしは「ここと変わりましょう」と新聞包ツリーに席を譲り、ひとつ後ろの席にずれた。

 きっと家の中で森の匂いがするんだろうな。それって幸せなことだ。後ろに座っているわたしにも樅の木の良い匂いがする。あぁ、わたしのクリスマスはこれで良いや、と思った。なんだかとても良い気分になった、クリスマスの為の出来事だった。

 同じバス停で降りた彼らは、赤いリースの掛けられたドアの家に入って行った。

 誰かの撮った写真で見るよりも、ずっとずっときれいだった。人の手による美しいもの。

 青くて深い海の底を歩いているみたいで、ずっとそこにいたら魚になってしまうのではないかと思った。

 青い冬の夜、この日はわたしのクリスマスだった。

 

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