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黄金町。

by 優恵

 薄ら寒い日の横浜、黄金町。そこはわたしの日々の暮らしの中にはない町で、映画館までの道もちょっとした旅になる。

 豚の貯金箱は、毎日こつこつと小銭を貯めて、いざという時に思い切って「えいっ」と割る、というドラマがある。自分のお小遣いの為ではなくて、大切な誰かがとっても欲しいと思っているものがあって「あと少し足りないんだ」と言っているのを聞いた次の日に「これ使って」と渡す時の為にとか、遠くに引っ越してしまった可愛いあの子が電話の向こうで泣いていて、今すぐ高速バスで駆け付けて「大丈夫だよ」と言ってあげなくちゃならない時の乗車券の為にとか、家族が頑張ったお祝いに美味しいものを食べたって良いけれど、とにかく自分だけの為ではないドラマが必要だ。と思っているので、今までの人生で豚の貯金箱を持ったことはない。持つ勇気がない。

 電車の中から大好きな崎陽軒のビルが見えた。

 蛇口とほうきとちり取りとスコップが一緒に買える店。

 てっきり古道具屋かと思ったら、ちゃんと新しい器を扱うお店だった。

 ここでも狛犬、もしくはシーサー、もしくはお獅子。

 左右並ぶと狛犬風。真面目な顔付きで招く。

 お蔵。中を拝見したい。

 琺瑯が子供の頃からとても好き。

 映画館の帰りに業務用スーパーで興奮気味にあれこれと買い込み、いったん冷静になろうと喫茶店でひとり珈琲。

 地元の常連さんたちの会話をなんとなく聞きながら、そこに埋もれるように身を潜めて息をつく短い時間がとても好きだ。わたしはそこにいるのにいない。

 さあさあ、そろそろ電車に乗らないと家に着く頃には暗くなってしまう、と少し急ぎ足で駅に向かう。

 京急黄金町。また来るよ。

 

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